ホスピタリティとは、「人に親切にする」「他の人を受け入れる」という意味であり、接遇とおもてなしの心に通じる言葉である。いくら形の上で接遇ができていても、ホスピタリティに欠いていては、相手の心に響くものにはならない。形だけのサービスであっても、不快にはならないかもしれないが、それだけでは感激したり、豊かな気持ちになることはほとんどないだろう。
多くの介護施設では、介護職に対して接遇マナーのマニュアルを用意しており、先輩や上司からその指導を受けることが多々ある。しかし、マニュアル通りの言葉遣いや動作で仕事をこなすだけでは、ただの模倣でしかない。近年は、ビデオなどの教材もあり、介護の仕事における基本的な立ち振る舞いなどは、ある意味できて当然になっている。しかし、ホスピタリティのある温かい心や感情を伝えなければ、本物の介護とはいえないだろう。そのため、プロとして、動作や立ち振る舞いをきちんとした上で、心をこめて接することが質の高い介護をするときには重要なのだ。
たとえ同じサービスであっても、そこにやさしいい顔が加わったり、笑顔や思いやりの気持ちが込められていれば、人の気持ちは豊かになる。さらに、積極的なコミュニケーションを図れば、人間関係を深めていくことにもなる。利用者と人間関係を深めることができれば、さまざまな考えや価値観に触れることにつながっていき、ひいては自分を磨いたり、人格を高めてくれることにもつながるだろう。つまり、ホスピタリティを磨くということは、他人のためだけでなく、自分自身が豊かな人間性を養うことにもなるのだ。